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吉本隆明の逆襲 一九七〇年代、一つの潮目 |
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吉本隆明の逆襲
四六判・272頁
ISBN4-8315- ISBN978-4-8315-1407-3
C1095
2015 年発行
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『吉本隆明の一九四〇年代』『吉本隆明の戦後―一九五〇年代の軌跡』『闘う吉本隆明』に続き吉本隆明の七〇年代のを描く。実朝論から始まる日本古典研究、それは「戦争中にうけた負債はみんな返済する」という吉本の戦中、戦後への逆襲の始まりでもあった。
●目次● まえがき 第一章 七〇年安保の後始末 Ⅰ「大学共同幻想論」―大学紛争の本質 戦後民主主義の試金石/日本の大学/改革の行方 Ⅱ「自立と叛逆の拠点」―思想の共同性とは ヨーロッパの学生運動/負の遺産/六〇年安保の経験 Ⅲ「収拾の論理」―機動隊導入への怒り 丸山研究室破壊事件/戦後民主主義の破綻/機動隊導入の論理 Ⅳ「畸型の論理」―社会のなかの大学 機動隊導入という範型/大学立法の論理/大学とはなにか 第二章 三島事件の衝撃 Ⅰ「暫定的メモ」―三島事件への発言 劇的な割腹死/空想的な死の観念 Ⅱ「政治と文学について」―三島事件の背景 観念と実行/市川団蔵の死/流布された情報 第三章 赤軍派の問題 Ⅰ「きれぎれの批判」1972―連合赤軍事件の評価 リンチ殺人事件/精神病理学者診断/服務規程/革命戦士 Ⅱ「きれぎれの感想」―赤軍派の錯誤 テルアビブ空港事件/政治運動の領域 Ⅲ「きれぎれの批判」1978―戦後的価値と戦争体験 敗戦から学んだ唯一の価値/われわれの選択 第四章 南島論―『共同幻想論』の展開1― Ⅰ「異族の論理」―南島論の意義 沖縄返還問題/農耕社会の成立/沖縄の可能性/大和王権以前の世界 Ⅱ「南島論」―天皇制以前の共同体 南島の宗教と大嘗祭/ヒメ-ヒコ制 Ⅲ「「世界-民族-国家」空間と沖縄」―沖縄問題の血路 慰霊祭問題/沖縄返還運動の錯誤 Ⅳ「南島の継承祭儀について」―天皇制と南島論を結ぶもの 権力継承に潜む謎/大嘗祭と南島の継承儀礼の共通点/聞得大君の就任儀式 第五章 天皇制論―『共同幻想論』の展開2― Ⅰ「国家と宗教のあいだ」―天皇制の本質を探る 天皇制と宗教/天皇の宗教的側面/アジア的という概念 Ⅱ「宗教としての天皇制」―無関心への警告 国家形成の継目/「風流夢譚」事件/無関心の危なっかしさ Ⅲ「敗北の構造」―天皇制成立の秘密 全大衆の総敗北/三つの敗北体験/横から奪い上にかぶさる 第六章 国家形成の原理をめぐって Ⅰ「集落の論理」―血族から部族へ 班田収受の法/血縁共同体から土地所有者の共同体へ/都市の成立 Ⅱ「家族・親族・共同体・国家」―南島と共同体形成の原理 南島の親族組織/国家形成の契機/狩猟と農耕の相互転換 Ⅲ「戦後史思想の頽廃と危機」―懐かしのメロディを歌うもの 戦争が露出してきた/世界体制の自己解体/国家形成の二つのパターン 第七章 実朝論 Ⅰ制度としての実朝 「詩人の生と死をめぐって」/制度としての実朝/「事実」の思想 Ⅱ実朝の短歌 実朝の万葉調/ニヒリズムの歌 第八章 和歌形式発生論の成立と展開 Ⅰ実朝論における和歌発生論の出発 和歌形式の発生/暗号から暗喩へ Ⅱ「詩的喩の起源について」―万葉初期短歌の構造 虚詞という概念/虚詞の役割/歌垣という場 Ⅲ「初期歌謡」―記紀歌謡から初期万葉への展開 初期歌謡研究の方法/初期歌謡の基本構造/初期万葉 Ⅳ「古代歌謡論」―短歌の原型とその展開 最初の詩歌/和歌形式の原型/和歌形式の成立 Ⅴ『初期歌謡論』―初期歌謡研究の集大成 律文化/和語と漢語のあいだ/歌の起源/全体喩 第九章 近松論 Ⅰ『出世景清』―時代物の世界 劇という概念/貴種流離譚の近世的形態/公と私 Ⅱ『堀河波鼓』―世話物の世界 世話物の題材/くるわ/卑小な死の動機/近松劇の分岐点 第十章 党派(セクト)の争い Ⅰ高橋和巳を偲び埴谷雄高『死霊』刊行を祝う集会 北海道大学で/東北大学で/京都大学で Ⅱ共産同叛旗派の分裂をめぐって 三上治のこと/講演会の妨害/学生と暴力 第十一章 親鸞論 Ⅰ「聞書・親鸞」―おずおずとした出発 最初の親鸞論/親鸞とキリスト教/『教行信証』への疑念/『歎異抄』『改邪鈔』そして書簡 Ⅱ「最後の親鸞」―本格的な出発 飢饉と餓死/救済の問題/不可避の一本道/念仏往生/悪人正機を超えて/宗派の無化 Ⅲ「ある親鸞」―沙弥教信という存在 著述と口述/賀古の教信/非僧の境涯 Ⅳ「親鸞伝説」―形成のカラクリ 女犯の戒/法然との関係 Ⅴ「親鸞論註」―異解問題について 造悪論/絶対他力と造悪/自然 第十二章 太宰治の文学 Ⅰ人間不信 成熟とはなにか/人間失格/偽善/太宰の陥ち込んだ場所 Ⅱ戦争期 脱出の可能性/戦争/「黄金風景」/太宰治の戦後 第十三章 西行論 Ⅰ「僧形論」―執筆の動機 西行の出家/急転する論述 Ⅱ「武門論」―惣領制の構造 院政の秘密/北面の武士/新しい倫理/内閉的倫理/執念のあさましさ 第十四章 宮澤賢治論 Ⅰ「宮澤賢治論」―賢治童話の構造 初期の短歌/幻想の方法―移行/幻想の方法―重ね合わせ/死後のユートピア/大乗仏教の思想 第十五章 鮎川信夫論 Ⅰ「鮎川信夫の根拠」―戦後を生き延びる 戦争体験/「繋船ホテルの朝の歌」―戦後の出発の歌 Ⅱ「鮎川詩の問題」―戦中と戦後を貫くもの 「囲繞地」/「橋上の人」/「繋船ホテルの朝の歌」―戦後詩の達成 第十六章 戦後詩はどこへ行く Ⅰ「戦後詩の体験」―戦争体験と戦後の血路 戦後詩とはなにか?/弱者の論理/戦前と戦後の軋み/戦後の空/平穏と安逸/戦後詩の終結宣言 Ⅱ「修辞的な現在」―修辞となった現代詩 起点/ブルトンの超現実主義/不可能への自己韜晦/日常性への嫌悪/現代詩と歌謡曲/風俗への回帰 第十七章 小林秀雄『本居宣長』批判 Ⅰ宣長の『源氏物語』論 折口信夫の忠告/稠密な議論 Ⅱ宣長の『古事記』論 偏見と錯誤/倒錯した言語感覚/戦後無化のモチーフ 第十八章 良寛論 Ⅰ生涯 道元禅/老荘思想と禅/一つのエピソード Ⅱアジア的ということ アジア的システム/老荘思想と儒教 Ⅲ良寛の詩歌 良寛短歌のイデオロギー/漢詩と長歌/「眠れぬ夜」―病苦の詩/「松山の鏡」―物語性の導入 第十九章 シモーヌ・ヴェーユ論 Ⅰ革命と戦争―ロシア・マルクス主義批判 三つの時期/ヒトラーとスターリン/革命と戦争 Ⅱ宗教へ―カウンター・カルチャーの問題 ヴェーユの絶望/工場体験の意味/反文化 第二十章 横光利一論 Ⅰ新感覚派の問題 魂の救済劇/「御身」/「悲しみの代価」/文体の問題 Ⅱ心理主義小説の問題 「機械」/「悪魔」/「時間」 Ⅲ純粋小説論の問題 通俗性とはなにか/純粋小説の意味 Ⅳ『旅愁』まで 奇妙な欧州体験/トリスタン・ツァラ邸での出来事/『旅愁』の悲劇 第二十一章 アジア的ということ Ⅰ「現代のむなしさと不信は越えられるか」―親鸞とアジア的思想 親鸞の自然思想/西欧思想とアジア的思想/ヒューマニズムへの不信 Ⅱ「世界史の中のアジア」―アジア的という概念の二面性 アジアの革命/アジアの社会主義国の二面性/西欧思想の行き詰まり あとがき
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