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吉原と江戸ことば考
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吉原と江戸ことば考
A5判・400頁
ISBN4-8315- ISBN978-4-8315-1620-6
C1021
2022 年発行
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現代でも使われる吉原生まれのさまざまな江戸ことばを、山東京伝の戯作を中心に、当時の経済、政治、社会を参照し、風俗や習慣の理解のうえで考察する。
●目次● 序文に代えて 第一章 現代も株世界で生きる「提灯を付ける」と江戸の遊里語「付き馬」 ①提灯に火を点ける「提灯を付ける」を考える前に提灯談義をしておこう ②江戸の吉原でも古い時代に生まれた言葉「付き馬」は落語でもお馴染み ③吉原生まれの「提灯を付ける」とは後から付いて来てくれという意味だった ④現代の証券用語の「提灯を付ける」のネット情報はガセネタ! 第二章 江戸言葉「いざこざ」「いさくさ」と遊廓吉原 ①「いざこざ」の意味と、その語源が「いさくさ」だとする語源説を追う、江戸の場合 ②平賀源内の『風流志道軒伝』が「いざこざ」の初見と考えると ③同じく平賀源内の『根南志具佐』の「いざこざ」 ④江戸っ子の戯作者山東京伝が作品の中で使う「いざこざ」 ⑤吉原という公娼街が江戸にできるまで ⑥吉原遊廓の開設で生まれた庶民文化と岡場所 第三章 山東京伝などの文学作品にみえる江戸の「いざこざ」と上方の「いざこざ」 ①「いざこざ」……山東京伝の場合、其一 ②山東京伝の「いざこざ」、其二 ③「いざこざ」……上方 ④上方の「いざこざ」の意味は悶着から文句まで幅広い ⑤商人たちの上方語と武家言葉の混在する厳格な江戸語の違い 第四章 「いざこざ」は江戸生まれで「いざ」は略語の本場吉原生まれ ①「いざこざ」は享保年間頃に江戸で生まれて上方へと普及する ②略語「いざ」を考えながら「通言」「通人」「大通」の語源も考える ③「いざこざ」の略語「いざ」は遊里での流行語で、意味はゴタゴタ ④「とんちき」は深川遊里の通言で「きいて呆れる」も同様 ⑤「いざこざ」の略語「いざ」には苦情・不平の意味も ⑥感動詞「いざ鎌倉」と略語「いざ」の例を見る 第五章 近世語「いき」「すい」「つう」「やぼ」と「ありがとう」の略語「ありが」 ①女性語は失われ江戸語の「いき」「すい」「つう」「やぼ」は現代に生きる ②江戸のスラングから現代略語マジ、ヤバイ、スマホ ③両替言葉「打つ」は「切る」へと変化する ④黄表紙に見える「ありが」と江戸の豪商 ⑤江戸の流行語「ありが」は浄瑠璃世界のスラングとして上方へと流れる 第六章 江戸の吉原言葉であった「気ざわり」「きざ」と「ざんす」 ①現代では上品とされる言葉遣い「ざんす」と「きざ」を比較する ②室町時代の京坂言葉「気ざわり」は江戸吉原で略語「きざ」となる ③略語「きざ」は吉原生まれで江戸っ子が遣う ④江戸の略語「きざ」の意味が現代語に近づきだしたのは何時頃か ⑤「きざ」の意味は不愉快・生意気となり、田舎からの「ぽっと出」を笑う ⑥貸本屋が貸す人情本の読者をとおして「きざ」は現代語化してゆく ⑦遊里語「きざ」の意味を転じさせ江戸語へ変えた女性たち 第七章 「泥」にまつわる江戸語と上方語にみる「ごみ」から「泥臭い」 ①泥はゴミ(塵)とう沈殿物だと江戸時代の初めは考えられていた ②「泥水」の悪いイメージは江戸時代の何時まであったか ③「泥]と「泥水」から「泥臭い」の意味は多様になる ④「水臭い」「水もの」が江戸時代語になってから意味が拡がる 第八章 「泥」の意味はゴミから離れ「泥臭い」「泥棒」「泥町」へと拡がる ①「くさい」というと「屁(オナラ)」の「臭い」が思い浮かぶ ②「泥水」や家屋の異臭から転じて「泥臭い」の意味は多様になる ③ゴミ(塵)は「ホコリ」「チリ」、「泥」はゴミと区別されてゆく ④落語での略語「どろ」と「泥」に似た語の「ドラ」や「ドラを打つ」を考える ⑤江戸のベストセラーは「泥棒(泥坊)」を略して「泥」と呼ぶ ⑥上方の「泥坊」「泥棒」「泥」と江戸の「源四郎」 第九章 「泥」「泥町」と呼ばれた京都伏見や江戸吉原の遊郭に資本は動く ①京都伏見の「泥」「泥町」「柳町」「田町」 ②京都伏見の傾城町資本や全国の傾城町資本は江戸吉原へと靡く ③浅草田圃への吉原移転にかかった費用を負担した幕府と水戸藩 ④豪華に遊ぶ吉原での「揚屋遊び」は経費がかさみ衰退する ⑤新吉原でお手軽な安見世の遊びは大衆化路線の伏見町にかぎる ⑥吉原起立に大資本が動き事業は展開した 第一〇章 遠山金四郎景元が株仲間解散で経済破綻する商業資本主義 ①「金が金を産む」商業資本主義のなかで生きてきた戯作者と資本家 ②商業資本主義社会の前に生まれた吉原 ③江戸の経済を動かした資本家は吉原へ投資し、追従して「提灯を付ける」資本家もいた ④遠山の金さんの失政決定打「株仲間解散」がもたらした経済と文化の停滞 第一一章 借金棒引きの棄捐令による経済混乱の世相では流行語や言葉は生まれない ①田沼意次の出世と連動し江戸の夜は明るくなり江戸語の小説は全国展開し読書される ②田沼意次の経済に魅了されて諸藩の外交官や商人は富国を目指す ③市場へ貨幣投入する田沼の経済政策に浮かれる武士たち ④寛政の改革での武士への朗報「棄捐令」で世相は暗く経済は失速 ⑤暗いデフレ景気のもとで新たな言葉は「経済」「景気」ばかり ⑥模様眺めの「景気」から「不景気」「不経済」「理財」の言葉が生まれる 第一二章 商業資本主義社会で札差が支えた遊郭の興亡と流行語 ①武士たちが救われた棄捐令と不景気をマーシャルkが証明する ②寛政の改革前の吉原生まれの言葉「猫」「オタンチン」「ケチケチ」 ③「ケチ」と「ケチケチ」は吉原で流行り現代までつづく ④徳川家康の知恵と、類焼の危機を乗り切るのが精一杯の吉原を較べる ⑤天明七年の吉原全焼後の再興に幕閣は手を貸さず 第一三章 金の世界の廓町を客と人情本読者たちはどう見ていたか ①吉原の張見世から産まれた言葉「ひやかし」「素見」と江戸の貨幣制度 ②吉原遊びの初会から裏を返し三会目までの客の懐事情 ③幕臣たちと庶民が抱いていた憧れの遊女と吉原は「泥」だった ④幕末の人情本を愛読した女性たちも遊女の住む世界観は「泥水」だった ⑤江戸時代に遊廓は「泥水」とも「花街」とも呼ばれ近代の公娼制度へと 第一四章 「いさくさ」と「いざこざ」再考、江戸小説に見る江戸訛り ①【いさくさ】……山東京伝は「いさくさ」をどんな意味で使ったか ②【いさくさ】……式亭三馬の場合と江戸の「いさくさ」と上方の「いざこざ」 ③【いさくさ】……十返舎一九の滑稽本や為永春水の人情本の場合 ④【いさくさ】と【いざこざ】……江戸っ子の言葉訛り 第一五章 「チャキチャキ」は江戸生まれでなく上方語 ①江戸時代語「チャキチャキ」と「ちゃくちゃく」について資料を整理する ②「ちゃきちゃき」は「ちゃくちゃく」から派生した江戸語か ③「チャキチャキ」は江戸ではなく上方生まれの上方育ち ④吉原の遊女屋玉屋で流行したスラング「チャキチャキ」 ⑤吉原のスラングにもなった「チャキチャキ」は武家言葉だった 第一六章 江戸生まれで現代でも使われている「てこずる」 ①「てこずる」……大田南畝が説く、江戸でつくられた流行語 ②まず「手こずる」の語源説を整理し「梃子(てこ)ずる」を考える ③「梃子ずる」説の梃子について考える ④梃子といっても道具として木製と鉄製の二種類があった ⑤「手こずる」の語源説の一つである「手の甲をする」を整理する ⑥「手こずる」の語源説は人間の仕草「手の甲をする」の略語だった 跋文 索引 |
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